あの国の本当の思惑を見抜く 地政学(その2)移動と地理2025年10月16日

あの国の本当の思惑を見抜く 地政学(その2)
あの国の本当の思惑を見抜く 地政学
社會部部長 (著)  サンマーク出版   1,800円+税

続きです。

安全保障のジレンマに最も長期的かつ、はっきりと影響を与える要素が「地理」。
地理は兵器や政治体制とは違って、時間をかけても変わらない。
ある国が攻撃と防御のどちらに向いているかに、地理は非常に有用。

攻撃・防御有利性への影響を見る上でカギとなるのは、
「移動をいかに防げるか」である。
国から国へ軍隊が移動しやすいほど攻撃有利に、
しにくいほど防御有利になる。
これに影響を与える主な地理的要素は3つ。
1.距離
2.地形
3.海

1.距離
距離が短いほど移動が簡単なので攻撃有利、長いほど移動が難しいので防御有利。
2.地形
平野などは移動を促すので攻撃有利、山、川、森といった自然的障壁は移動を防げるので防御を有利にする。
3.海
陸で接する国を攻めるのは容易なので攻撃有利、海で隔てられた国を攻めるのは困難なので防御有利。

1.距離
国家は自国の防御を有利にするために、他の国と物理的に距離を置こうとする。
この距離の取り方は2つある。
A:戦略縦深
B:緩衝地帯

A:戦略縦深とは、国の中枢と戦闘地域の間の距離のこと。
首都と国境の距離、
ロシアの一番の武器は、核ミサイルや戦車隊ではなく、ドイツやフランスなどのヨーロッパの大国から首都モスクワが1,600km以上も離れている地理的事実。戦略縦深が深いのだ。

B:緩衝地帯とは、国と国の間に位置する、どちらの国の領土にも含まれない地域のこと。
両隣の2国が直接国境を接しないようにする役割を果たす。
他国と距離をとるもう一つの方法が緩衝地帯。
例えば、朝鮮半島、特に北朝鮮は韓国と中国を物理的に隔てて中国軍と米軍が直接接することを防いでいる。
ドイツとフランスの間のベルギーや、ドイツとロシアの間のポーランドが緩衝国の典型例。

2.地形
現実の世界は、山岳、河川、森林、湿地、砂漠、雪原など、人間が簡単に通れない場所がたくさんある。
軍が敵地に向かうとき、これらの自然的障壁があると進軍が遅くなる。
時間と膂力を消耗するし、これらの地形は防御側の待ち伏せや反撃に利用されるので、一般的に防御側が有利になる。
このような地形で隔てられた国同士では攻撃が難しいので、お互いに警戒せずに済んで平和が生まれる。
スイスは山に守られた典型の国。
エチオピア、アフガニスタンも山岳に守られた国。
ベトナムは熱帯雨林が人の移動を難しくしている、ベトナム戦争では、北ベトナムの兵士たちが深い熱帯雨林に隠れてゲリラ戦を展開したおかげで、戦力で圧倒的に勝る米軍を撃退できた。
一方で、
自然的障壁がない国は攻撃有利になりやすい。
ポーランドはその大部分が平野で構成されているため、昔から何度も他国に侵略されてきた。

この項、更に続く