あの国の本当の思惑を見抜く 地政学(その7)ロシアとウクライナ2025年11月30日

あの国の本当の思惑を見抜く 地政学(その7)
あの国の本当の思惑を見抜く 地政学
社會部部長 (著)  サンマーク出版   1,800円+税

続きです。

ロシアは弱点を克服して成り上がった大国。
ロシアを今日まで悩ませてきた諸悪の根源は、北ヨーロッパ平野。
この平野はフランスのピレネー山脈からロシアのウラル山脈まで広がり、
その内側に、
フランス
ベルギー
オランダ
ドイツ
デンマーク
ポーランド
リトアニア
ラトビア
エストニア
フィンランド
ベラルーシ
ウクライナ
モルドバ
ルーマニア
ブルガリア
カザフスタン
と、多数の国を含有する非常に広い平野だ。
過去500年の間にロシアを本格的に脅かした敵勢力は
全てこの北ヨーロッパ平野からやってきた。

1605年にはポーランド
1707年にはスウェーデン
1812年にはフランス
1914年と1941年にはドイツが、
この平野から来襲して、ロシアを滅亡寸前まで追い詰めた。

障害物が何もない平野で、敵の侵攻を防ぐには、
防御を有利にするために、少しでも外敵との距離を確保しなければならない。

ロシアの西の世界への神経質な態度の源泉には、
この平坦で外国軍の侵入を容易に許してしまう地理的繋がりがある。
ロシアとその西の国々との国境には自然的障壁が存在しない。
政治的に隔てられていても、地理的には繋がっている。
ロシアは強いから広いのではなく、弱いから広くならざるを得ない。

第1次大戦後、東欧諸国で独立国家群が誕生し、
ドイツとロシアの間に緩衝国が入った。
両国は物理的に離れ、お互いを恐れずに済む。

第2次大戦でドイツが東欧を突破し、ソ連まで進攻した。
ソ連は反転攻勢でベルリンまで進軍し、ソ連が東欧を制した。
戦後ドイツは東西に分割された。

その後、冷戦が終結し、1990年に東西ドイツが統一された。
ロシア人は、冷戦終結とは米ソの歩み寄りでなされたと捉えている。
アメリカ人は、冷戦終結はアメリカが勝利した証拠だと考える。

こうした両国の齟齬が解消されないまま、
NATOは20年かけて東へ拡大した。

1999年に、
チェコ
ハンガリー
ポーランド

2004年に、
ブルガリア
エストニア
ラトビア
リトアニア
ルーマニア
スロバキア
スベロニア

2009年から2020年の間に、
アルバニア
クロアチア
モンテネグロ
北マケドニア
がNATOに加わった。

どんどん狭まる緩衝地帯を前に、ロシアは危機感を募らせた。
ウクライナは東欧に残された貴重な緩衝国であり、
ロシアはこれを死守したがっている。

ロシアがクリミア半島にこだわる理由の一つは、
ここが海への出入りをするうえで重要な海上交通の要衝だから。

ロシアの海洋進出を阻む地理的障壁は2つ。
第1の障壁は、重要な海域が分散していること。
北極海
バルト海
黒海
太平洋の4つに分かれている。
そのため、海軍力を分散して配置しなければならない。

第2の障壁は、
外洋への出口がふさがれていること。
ロシアの海岸は北極海を除いて、すべて内海に面している。
狭い海峡によってしか外洋とつながっていない。

オホーツク海は唯一安全な内海。
ここは海底も深いので核兵器を搭載した原子力潜水艦を隠すためにも使える。
この戦略的重要性から、ロシアが北方領土を返還する可能性は、今後もかなり低い。

海峡を安全にするためには、その両岸を支配しなければならない。

ロシアが2022年からのウクライナ戦争で犯した失敗は、
フィンランド(2023年4月)とスウェーデン(2024年3月)のNATO加盟を促してしまったこと。

ウクライナにおける一連の戦争は、
大陸勢力と海洋勢力の長い戦いのほんの一部。
東欧の地理は変わっていないし、
ウクライナがドイツとロシアの間の緩衝地帯である位置づけも変わっていない。

この項、まだ続く。