マンション管理業の今後のあり方について(その2)最終回2010年07月26日

マンション管理業の今後のあり方について (続き)

 一方、マンションは日本の社会の中では歴史の浅い建物であり、
維持管理に関する技術が十分に確立されているとは未だ言えない。

 マンションを良好に維持管理し快適な建物として長持ちさせるためには、
マンションに使用されている様々な建築材料の性質に最適な手入れを
施すことが必要である。
この手入れは日常的に行われる保守・点検・修繕と、
建築材料の耐用年数に対応した適切な時期に手入れをする
計画修繕とがある。

 どのような部位を、いつ頃、どのように修繕していくかをまとめたものが
長期修繕計画である。
前述のマンション総合調査によると、
この長期修繕計画を作成している管理組合の割合は増加傾向にあり、
平成20年度調査では89.0%の管理組合が長期修繕計画を作成している。

長期修繕計画の目的は、
修繕時期の目安を決めることと、
その修繕にどの程度の費用を要するのかを知り、
修繕積立金の資金的裏づけとすることにある。

 再び前述のマンション総合調査を見てみると、
修繕積立金の算出根拠は、
「長期修繕計画で算出された必要額に基づき決めた」が74.0%と最も高くなっているものの、
「管理費の一定割合とした」も8.3%ある。

さらに完成年次の古いマンションは、
この「管理費の一定割合とした」の比率が高く、
適切な修繕積立金額が確保されているかどうか懸念されるところである。(表2参照)

修繕積立金額は、
計画的に行われる修繕工事の資金計画に基づいて設定されなければならない。

表2 修繕積立金の額の決定方法(完成年次別)

           長期修繕計画で      管理費の
           算出された必要額に   一定割合とした
           基づき決めた
全体           74.0%             8.3%
昭和39年以前     40.0%             20.0%
~昭和44年       57.6%             18.2%
~昭和49年       61.8%            13.5%
~昭和54年       67.5%             18.3%
~昭和59年       68.2%            10.7%
~平成元年       71.3%             12.0%
~平成6年        76.2%             7.9%
~平成11年       80.8%              4.6%
~平成16年       79.9%             5.1%
平成17年以降      73.7%             4.5%

出典:「平成20年度マンション総合調査」国土交通省

 上記の状況を踏まえて、
マンション管理業者が今後具備すべき能力とは、
マンション建物全体のバランスをトータルに判断し
長期のタイムスパンで見ていく眼と、
その資金の裏づけを計算できる頭脳であろう。

 また、マンションを良好に維持管理していくためには、
人任せにせずに区分所有者が皆で大切に維持管理しようとする気持ちのまとまり、
すなわち「コミュニティ」こそがマンションにとって最も大切になるであろう。
マンション管理業者には、
いろいろな専門家の眼とそれらを総合的にコーディネートし、
居住者の生活の利害調整やコミュニティの成熟を嫌がらずに腰をすえ
一緒に考え、マンション内のコミュニティを作り上げていく力が求められる。

言葉を変えれば、
かかりつけのホームドクターのように管理組合との信頼関係を築き上げ、
長い年月をかけたお付き合いができる管理業者が求められていくと思われる。

参考文献
「平成20年度マンション総合調査」国土交通省

以上、この項終わり。